4 薬屋とボルタ電池

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用事を済まし、人混みから逃げるように浅草寺から遠ざかっていると、正面からやってきた中年男性が寛子にぶつかった。 「失礼」 男は会釈して通り過ぎようとしたその時、すぐ近くにいた若い薬の行商人が、男の肩を掴んだ。 「待ちな。いまこの御婦人から盗んだものを置いていきな」 「なんのことでござんしょう」 男は素知らぬ顔である。 すると、薬屋の若者が男の腕を捻り上げた。 「いだだだだだだ!チッ!この野郎、持ってけ泥棒!」 中年の男は懐から巾着袋を取り出して地面に叩きつけると、走って逃げ去った。 その巾着袋は寛子のものである。 「泥棒はどっちなんだ、まったく」 薬屋は巾着袋を拾って汚れをはたいて落とすと、ポカンとやり取りを眺めていた寛子に差し出した。 「お気をつけておくんなさい」 「はぁ。どうも。目がいいんですね」 寛子はおずおずと受け取りながら、首を傾げた。 「こんなの盗って、何をするつもりなのかな」 ズシリと重量感があったので、 「おや、大事なものではないので」 と薬屋が不思議がった。
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