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まずは伊織が、音の常識を説明する。
「そもそも、音というのは波なんだ。空気の振動によって音は伝わっていく。
この振動の周波数、すなわち一定の時間あたりに揺れる回数を多くすると、より遠くまで届くようになる。
伝えたい音の振動数を上げて発して、受け取る側では振動数を少なくして元の音を復元すれば、遠くでも聞こえるようになる」
薬屋は一瞬ポカンとしていたが、すぐに笑い出した。
「音は波ですってぇ?嘘言っちゃぁいけませんや。それならこの世の中、波だらけだ」
「そうだ。波だ。今俺が喋っているのも、この喉にある声帯と呼ばれる部分を震わせて、それによって空気を振動させ、その振動した空気が貴様の耳の鼓膜を震わせて、貴様は音を聞いている」
伊織の説明を聞いて、薬屋はすぐに笑いを引っこめた。
「どうしてそんな見たこともないものを自信を持って断言できるんで」
「それは、科学的に正しいと言えるからな」
「科学?そいつは一体?」
薬屋は伊織の言うことを新手の宗教か何かだと思っている節があり、矛盾を突いては説き伏せようという魂胆が見え隠れしていた。
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