第1章

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 此処で私はある事に気付く。 女性の背後にある車窓の景色がガラリと変貌していたのだ。 夜の景色が様々な建造物のネオン彩る何とも綺麗な夜景で、その中央には見覚えのある建物が見える。  あれは北海道の函館にある五稜郭じゃないか。 名古屋の電車に乗っているのに、北海道の建物が見えるのは奇妙だと不審に思いながらも、少し懐かしい気持ちになる。  「覚えてますか?片道15分の道の筈なのに随分時間を掛けて歩いてしまった事を」  確かに、あの時は散々歩き廻って疲れたな。 でも何故、この女性は私のそんな所まで知っているのだろう。益々怪しい。 私の疑問の答えが出る前に、今度は景色が夜から朝に変わり、目の前に開けた砂浜が現れた。  この光景も私には見覚えがある。  ハワイだ。  「懐かしいですね。此処で私は、和美さんが勉強家さんだと言う事を知ってあなたの事を好きになった」  「ちょっと待って。先程から私の事を色々知っているようだけど、あなた一体」  謎の女性と次々と変わる車窓の景色と先程から不可解な現象が続いたので、私は混乱しそうになり、思わず彼女に訊ねた。  ストーカーの類いが北海道はおろかハワイまで付いて来たと考えるのは飛躍し過ぎかもしれないが、この女性はひょっとしてアレの類いかと疑ったが、  「私達の関係ですか。それは、何れ旅が終わったら改めて教えます」
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