第1章

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 旅とは一体どういう事なのかは判らないが、 色々と考察を巡らせてみる。 私は名古屋の列車に乗った筈だが北海道やハワイの景色が見えると言う事は、 私は電車の中で眠りこけていて夢を見ているんだ。 然し、目に見える風景は私が旅行した場所に限定されているのは、きっと何か特別な意味があるのかも知れない。 巧く理屈では説明出来ないが、 これは自分の人生を振り返る走馬灯の一種のように思う……。 て事は、私は列車事故か何かに遭って今意識を失っているのだろうか?  頬をつねったりして確かめてみる。  「痛――」  どうやらこれは紛れもない現実のようだ。 車窓の景色はまたもや変わり続ける。今度は山が見えるがあの山は、京都の嵐山だ。  「あそこで売られてる和菓子美味しかったわね。『おのみやす』とか『まるん』とか沢山お店が出て目移りしそうになったわよね。八つ橋も良いわよね」  女性は、私が京都に旅行した所まで知っているようだ。  然し、考えてみると私は最近旅行に行けてない。休日出勤で休みの日にどこかへ出掛けようにも出掛ける事が出来ず行こう行こうと思っていた旅行はお預けになってしまっていた。 だからか、私は自分が旅して来た風景を見て懐かしくなり「また行きたい」とさえ思えて来た。  「うん、そうだね」
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