第1章

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 それから私は、  旅行先の風景を見ながら名前も知らない女性と暫く話をしながら、この謎の旅を楽しむことにした。  彼女が誰で、今何が起こっているのかはそれは旅の終わりに判ることだし、  懐かしい風景に思いを馳せるのも悪くない。 出来る事なら仕事や厭な事は全て忘れて、ずっと彼女と旅を続けたい。  続いて変わった景色は記憶に新しい北陸の金沢のものだった。 綺麗な梅の花が咲いた木に囲まれた金沢駅には『ようこそ金沢へ』の電光掲示板があり、その隣には金沢城。そして兼六園の景色が広がっている。  「いよいよ和美さんとの旅もこれで最後ね」  「え?」女性が少し悲しげな声で言った言葉に思わず訊ねてしまう。  「最後の旅行、とても楽しかった、私、幸せ……有り難う。和美さん」  女性はニッコリ笑ってそう告げた。  「次、新しい人が来るから仲良くしてあげてね。さようなら」  「え、ちょっと待って。貴女は――」
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