第1章

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 プアーー。  ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン。  けたたましい電車の音で景色は普通の電車のものに戻った。先程までいた女性はもういない。 私は矢っ張り眠っていたのか。 其れにしても奇妙だけど愉しい夢だったな。  「ねぇ聞いた? 電車、新しいダイヤルが出るらしいって」  向かいの席の主婦二人が何やら話している。  「そうなのよ。だからこの電車は廃線されるらしいみたい」  新しい電車が出るからこの電車が廃線に? 私が電車の中で見た不思議な風景は確かに走馬灯のようだ、 きっと、 幼い頃からこの電車に揺られて育った、旅好きの私を選んでくれたのだろう。 最後の見届け人として。  有り難う。  電車さん。  電車の走行音が幽かに有り難うと囁いたかのように聞こえた。  了。
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