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彼女の方は、もうすぐ退院ではあるが、いつ再発するかという恐怖とも戦わなければならない。
50%は、再発すると言われているからだ。
彼女は、敏腕弁護士の娘だった。
名前は、桐野姫子といって将来清美にとってなくてはならない存在になる人物である。
容姿端麗の彼女は、同姓の清美からみても美少女だと思えるほどだった。
そして、性格は温厚で優しかった。
もう一人が、目が見えない同い年の少女、名を熊田サラといった。
彼女は、目が見えなくても本当に温かい女の子だった。
清美は、すぐ三人と友達となった。
桐野姫子は、清美の部屋に毎日のようにやってきた。
二人の絆は、この時にできたのだ。
清美は、一日一日が楽しく学ぶことも多かった。
サラと、もっと仲良くなるために点字を覚えたいと思った。
清美は、たったの三日で点字をマスターした。
そんなある日達也は、清美に聞いた。
「清美は、記憶を取り戻す治療をしてないみたいだけどどうして?」
清美は、困ったように
「私は、このままでいいんだって。
私の親だという人が、言ってた」
達也は、思った。
清美が、銃で撃たれたことを考えるとそれだけのことがあったに違いない
と思った。だから、思い出させたくないのだと。
達也は、清美を笑顔で見て「だったら、いいんじゃないかな?
今のままで。
ごめんね。変なこと聞いて」
清美は、首を振った。
達也は、清美を連れて病院の屋上に行った。
「清美、僕は大企業のトップの息子として生まれた。
だからこそ、思うことがある。
それはね。企業というのは、商品を開発することによって、国全体を豊かにすることを何よりも考えなければならないんだ。
でも、実際は綺麗事じゃすまないのさ、企業全体が利益をあげることに闘志を燃やす、そうしなければ企業そのものが潰れてしまうという危険性があるからだ。
そして、従業員を雇ってる以上、従業員の生活を守る必要があるんだ。
でも、利益優先では人の心に届く商品を作ることはできない。
誰が、こんなに息苦しい国にしたんだろうね」
達也は、そう言いながら清美を見た。
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