第1章

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その人の名前は、月島望といって公認会計士の鏡といっていい人だ。 あの人は、健全な企業を100社も作りあげた経済界の革命児と呼ばれててね。 僕も、望さんに会ったことがあるからわかるんだけど人間的にも素晴らしい人だった。 君は、記憶を無くしてるから思い出せないかもしれないが、君の実の父親だ。 今の君のお父さんは、望さんの無二の親友で、望さんの死後、君のお母さんが再婚して、君とお母さんを守り続けてきたのは偉大な父である今の君の父、堺義弘刑事局長だ。 もちろん、今の君からすれば遠い人かもしれないし、しっくりこないかもしれない。 でも、君が東京に行ったら周りからは、警察庁刑事局長の娘として見られることになるから、これは、認識しておいた方が君のためだ。 僕はね。偉大な二人の父を持つ君に、ずっと会いたかったんだ。 あの月島望が、可愛がった娘がどういう人なのか知りたかった。 だけど、僕は病気にかかって君に出会うことなどできないと思ってた。 でも、実際に君に出会うことができた。 僕は君を見た時、本当に嬉しかった。 僕の夢が、叶った瞬間だった。 そして、君は僕のキスを受け止めてくれた。 もちろん、同情でも構わなかった。 何故なら、子供のころから会いたかったお姫様に出会えてファーストキスまでできたのだから。 だから、最後にもう一度、君に出会えて良かったと心から言わせてもらうよ。 と書かれていた。 清美は、号泣し、それを読んだ知子も泣いた。 清美は、知子に訴えた。 「ねぇ!どうして人は死んじゃうの! 達也は、まだまだ生きたかったんだよ!」 あまりにも、純粋すぎる清美の言葉に知子は、思い出した。 望が死んだ時以来、この娘のこういう姿を見たことはなかった。 だけど本当は、私に問いたかったのかもしれない。 あの娘は、決して本心を私の前で見せてはくれなかった母親失格の私。 でも、今こそ私が母親としてこの娘を守る時だと思った。 清美は、母がどういう人物なのか、今まで本当の意味で見てこなかったため、ここで見極めようと思った。 芝居をしてる今のうちに……。
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