考える臓器

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 僕は、ああ、そうだっけ。と思った。  僕らは冷たい海の底。ペリカンアンコウという深海魚と同じだ。  ペリカンアンコウのオスはメスに依存するようにメスにくっつく。  そして頭は同化し溶けてしまう。  そいつは生殖器官だけが残り、彼女に張り付いてる。  僕もそうさ、死んで生殖器官だけモグリの医者に移植された。  でもさ、なんで生殖器官だけになっちゃてんの?  本当に僕ら愛し合ってたの?  で、僕は本当に自殺なの? 深ちゃん教えてよ。  君と同化した僕の器官が微かに覚えてるんだ。  なんか僕は誰かから突き落とされたような気が……。  何言ってるのよ、海ちゃん、あなたは自殺しちゃったのよ、私への思いが強すぎたのね。もう大好きすぎたのね。  安心してこれからも私たちは一緒なんだから。  永遠に私たちは一緒よ。  うふふふ。 「数年前にあった事件だからね、無理心中? で死んだ男女。いや、確か男だけ死んだって聞いたな……海ちゃんとか彼女が言ってたって聞いた。別れ話がもつれてなんだろうな」  でももうなんだか僕の器官での記憶はこれが精一杯。  ま、いいか。なんだか騙されたという気分も記憶も曖昧になってきた。  これからも君の中で僕は。  
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