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どう答えようか悩んでいた時。遠くで様子を見守っていた蓮が、何処から持ってきたのかスケッチブックを俺に掲げているのが見えた。どうやら何か書いているらしい。
俺は会長にバレないよう若干俯いて、スケッチブックに書かれた文字に目を凝らした。
「……!」
書いていたのは、この危機的状況を突破出来る方法だった。これをすることでどうやってこの危機を回避出来るのかも分からないし、普段の俺なら確実にふざけるなと叫んで却下していたであろう方法。
しかし今の俺は、不測の事態に冷静になる余裕を失っていたんだ……。
「返事をしろ、夜霧。俺様のことが好きなんだろう?」
会長の手が俺の顎に添えられる。
俺は大きく息を吸い込むと、伏せていた顔をバッと上げた。
「当然です!あんなモジャモジャダサ眼鏡なんかより、会長様の方が何百倍も、何千倍も大好きに決まってるじゃないですか!会長様に近付く輩は、全て俺がじわじわと嬲り殺しにしてやるんです……。ね?会長様もあんな蟲共に言い寄られて迷惑ですよねぇ?大丈夫です、会長様には指一本触れさせません。あぁでも、会長様に言いよる蟲が多すぎて俺だけでは排除しきれないかも……。そうだ、会長様を俺の部屋に監禁しちゃえば良いんですよね。そうすれば蟲は会長様に近づけないし、俺もずっと会長様の側に居られる……なんだ、簡単じゃないですか。そうと決まれば早く手錠を買いに行かなきゃいけませんね。ああでも会長様は足枷の方がいいのかな?会長様、どちらが良いですか?」
一息で言い切ってやった。
蓮が考案した名付けて【実はヤンデレ☆大作戦】。ふざけたネーミングだが、腐男子として数々の事態を予測できる蓮が練った作戦だ。
藁にもすがる思いで実行したが、こんな作戦で一体どうやってこの状況を突破出来ると言うのだろうか?
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