1725人が本棚に入れています
本棚に追加
「つーわけで、今日来たよ転校生」
『うっひゃああああああああああ!!と喜びたいところだけど、どうやら王道通りにはいってないみたいね』
「今絶対素で喜んでただろ」
モジャモジャが来たその夜。
俺は約束通り、母さんに電話で転校生が来たことを報告した。話を聞き終えた母さんは一通り発狂した後、難しそうに『うーん』と唸った。
『王道通りなら、学食では会長と転校生がキスするところよ』
うげぇ……副会長とのキス(頬チュー)だけでも気持ち悪かったのに、そのまま王道で行けば、会長ともキスする予定だったのかアイツ。
『でも現実は、転校生じゃなく近くにいた柳が気に入られたんでしょ?』
「蓮のおかげで逃げ出せたけどな」
『うーん……今まであんたにホモになることを勧めていたけど、実際息子に火の粉が降りかかってみるとなると、ちょっと複雑だわ』
そうだろう?そう思うなら今すぐ転校させてくれ。そうすれば万事解決だ。
『柳は元々報告要員として送り込んだだけで、生徒会や転校生と接触させるつもりはなかったんだけど……あんた、顔は良いものね』
「なんだその顔だけが取り柄みたいな言い方は。頭もそれなりには良いぞ」
これでも一応学年首席だ。
『まあとにかく、これからは気を付けなさい』
「……どういうこと?」
唐突な俺の身を案じる言葉に、片眉をピクリと上げる。本を読みながら通話しているらしく、電話の向こうでパラパラと紙の捲れる音が聞こえた。
『目的はどうあれ、今回あんたがやったことは、自分がホモということを肯定したことには変わりないわ。それもヤンデレという性癖付きで』
「つまり?」
母さんがニヤリと笑ったのが、電話越しでも分かった。
『新しいファンが増えるかもしれないってことよ』
最初のコメントを投稿しよう!