7. 新しい任務

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達也はデータをカーナビに転送すると、車をスタートさせた。急ぐため手動運転に切り変え、スピードを上げる。 狭い路地を巧みにハンドルを切りながら、徐々に男に近づいて行く。 やがて、カーナビの赤い点滅表示と現在地が重なり、達也は道路を塞ぐように斜めに車を止めた。 塀に囲まれた行き止まりの路地の先に、その男はいた。 隠し持っていたのか、手にバタフライナイフを持ち、落ち着き無く体を揺らして、達也達を睨みつけている。 「全く……、逃げ切れるわけねえだろうが!」 車から降りながら、富田が怒気を孕んだ声で叫ぶ。 男に近づきながら達也が声を掛ける。 「そこを動くな。これより、非労働者再生法第9条11項に基づき……」 「もう、いいよ!」 富田が遮る。相当頭に来ているようだ。 「……来るな、来るんじゃねぇ。おまえらに捕まるなんざまっぴらだ」 男は、半分脱げかかったトレーナーパンツを押さえようともせず、ナイフを振り回す。 「ああ、めんどくせえ。撃っちまえよ、神条。撃て」 「いや、それは……」 「誰も見てねぇって。訓練の成果を見せてみろよ」 「私が拘束します」 「なんだよ、強制労働組のくせして上の命令が聞けないのかよ」 達也は富田を無視すると、ゆっくり男に近づいて行った。 やおら、男がナイフを握った拳を振り上げ奇声を上げながら、達也に向かってくる。 弱々しく空を切る男のナイフを軽くかわすと、後ろから羽交い締めにして路上に倒し押さえ込む。 すかさずナイフをもぎ取り、後ろ手で手錠を掛けた。 動きを封じられても、男は叫び続ける。 「俺は知ってるんだからな!再生施設に行ったらどうなるか!お前ら、こんなことして何とも思わないのか!!」 男を引きずって、やっとの事で車の後部座席に押し込んだ。 男はシートの上でなおも暴れながら、達也の顔に唾を吐きかける。 「おまえなんざ、RATS(ラッツ)の餌食になればいいさ」 RATS……? 何の事だ。 始めて聞く名前だった。 富田は何もせず、腰に手を当てたまま達也を睨んでいた。 「神条、俺の命令無視したな。どうなるか覚えてろよ」
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