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数日後の午後、達也は池袋支局長の呼び出しを受けた。
席を立つ達也に、富田は冷ややかな薄ら笑いを投げかける。
あれから富田とは、業務上最低限の会話しかしていない。
おそらく上長に、命令無視の件に関して、尾ひれを付けて報告しているのだろう。
以前、会社で人事部に呼び出された時と同様の、嫌な予感が頭をよぎる。
ノックして部屋に入ると、支局長と直属の部長が厳しい顔をしてソファに座っていた。
二人とも60代の天下り組だ。
敬礼をして様子を伺う。どうやらソファには座らせてもらえないらしい。
部長がいきなり本題に入った。
「神条君。数日前、君のところに骨が届いたね」
「はい」
「誰から届いた?」
「わかりません」
「わからないはずないだろう。心当たりがあるはずだ」
「それが……、見当もつかないのです。誰の骨か分かったのですか?」
「質問しているのは私だ。余計なことを聞くな」
「すみません」
部長は支局長の方に振りかえり、何やら耳打ちする。
どうやら、呼び出された理由は骨の件らしい。
支局長が、ゆっくりと口を開く。
「労働局の仕事は慣れたかね」
「はい」
「そうか、それは残念だ。君の働きには期待していたのだが、来週から保安局へ異動してもらう」
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