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達也は、派手なLEDディスプレーや街路灯の光に包まれた池袋の繁華街を通り、駅へと向かっていた。
「達也?」
ふいに、後ろから呼びかける声が聞こえる。
懐かしい声だ。
何度、その声を思い出しただろう。
振り返ると、愛美が驚いたような顔で立っていた。
自慢のロングヘヤーはショートに、グロスの入った派手なリップはナチュラルカラーへと変わっているが、確かに愛美だ。
「……愛美」
思わず声が詰まった。
「びっくりした。どうしてた?」
「愛美こそ。何度も連絡したんだぞ」
「ごめん。私もいろいろあってさ」
愛美は歩道の街路柵に腰を掛け、足を伸ばした。ショートパンツから伸びる長く白い足が眩しい。
「いろいろって……」
「達也は今、何してるの?」
「……まあ、なんとかやっている」
局員は所属や職務内容を口外できないのだ。そもそも、労働者再生機構で働いていることなど、愛美に知られたくなかった。
「ふうん。職見つかったんだ、良かったね。再生されちゃったかと思って心配してたんだよ」
笑みを浮かべながら首を傾げるしぐさは、昔のままだった。
思わず、これまでの辛い体験の数々を話したい衝動に駆られた。全てを吐き出して愛美の体に包まれたい。
……しかし、それはできない。
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