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新たな1週間が始まろうとする、日曜の深夜。
池袋労働局の地下駐車場では、黒いボディアーマーとヘルメットに身を包んだ保安局の隊員達が、慌ただしく動き回っていた。
黒塗りのランドクルーザー(※)が3台、均等に間隔を開けて待機している。
「準備完了。トランスポーターを寄こせ」
一人の隊員がインカムに向かって指示を出す。
駐車場の奥から、2台のマイクロバスが走って来てエントランスに並んで止まる。
いずれもランクル同様、黒く塗られており、窓には目張りがされている。
ドアが静かに開いた。
「よし、パケットを乗せろ」
合図が伝達され、駐車場のエントランスホールから、隊員を先頭に普段着姿の数十人の男女が一列に並んで現れた。
寝入りばなに叩き起こされたのか、皆眠そうな表情で足取りに力がない。
列の両脇を数人の隊員が固め、マイクロバスの車内へと誘導して行く。
全員を収容すると、隊員達はランクルに分散して乗り込んだ。
長いホーンの合図とともに、2台のランクルが続いて発車し、次に男女を乗せたマイクロバス、最後にランクル1台がその後に続く。
合計5台の隊列を組みながら、駐車場をゆっくりと出口の方へ消えていった。
達也は車列のテールランプを見送った後、ふと腕時計に目をやる。
午前1時ちょうどだった。
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(※)ランドクルーザー(ランクル)
車高が高く、悪路走破性に優れた大型の高級四輪駆動自動車
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