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道は次第に細くなり、ダート(未舗装路)へと変わった。
深い森の中に多くの分岐が出現し、高村は速度を落として慎重に道を選択していく。
「さてさてー」
高村が、ハンドルを大きく切る。
ひとつの大きなコーナーを曲がった先で森が途切れ、いきなり視界が広がった。
開けた空間の前方に、高さ10メートルほどの巨大な緑色の塀が見える。
塀は左右に延々と続き、広大な敷地を取り囲んでいるようだ。
山の入り口にあったものと同じ形状のゲートが、道路を封鎖している。
高村が大きく息をつく。
「やれやれ、この愛しい第2ゲートを見るとほっとするぜ」
未だ身を強ばらせたままの達也に、長内が気どった口調で声を掛けた。
「再生施設へ、ようこそ」
綺麗に手入れされた芝生が広がる、がらんとした敷地の先に、その巨大な建造物は姿を現した。
エントランス側は、広く大きな窓が並ぶ5階建ての近代的な建物だ。アメリカのシリコンバレーにある、巨大なIT企業の建物を彷彿とさせる。
その奥に、コンクリートむき出しで窓の無い、無機質で巨大な棟が通路で繋がられている。屋根に数本の低い円筒状のオブジェのようなものが見える以外はデザイン性がなく、まるで巨大な箱のようだ。
2練並んだ建物は対象的で、達也は妙な不自然さを感じた。
5台の車列がエントランスに並んで停車すると、建物の中から全身白の制服、白いキャップを被った数人の男達が出て来た。
「再生局の連中は、涼しげでいいよな」
高村が、汗まみれの顔を手で仰ぎながら嫌みを呟く。
長内は車のウインドウを開け、白服に話しかけた。
「お疲れさまです、池袋2班です。再生対象者53名を搬送して参りました」
搬送確認書が表示されたタブレットを手渡す。
白服の再生局員はタブレットを確認すると、感情のない目を長内に返した。
「お疲れさまです。それでは再生対象者をこちらで引き継ぎます」
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