8. 管理区域

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建物の最上階にある大きな食堂の窓からは、広大な敷地と塀を挟んだ奥に広がる深い森が一望できた。 空は雲ひとつない快晴で、朝の陽の光が差し込んでいる。 第8搬送隊の隊員達は、和やかに談笑しながら給仕された朝食をとっていた。 2時に池袋を出発して、5時半に施設に到着。 たった3時間半だが、緊張もあってか達也の疲労はピークに達していた。特に肩の凝りが酷い。 「どうだ新人、疲れたか?」 長内が、ひとり無言の達也に気づき、声を掛ける。 「はい。さすがに緊張しました」 「最初はそんなもんさ。常に襲われるわけじゃないから、そう心配するな」 「帰りは、再生者を乗せるのですか?」 「いや、再生処置には時間がかかるから、俺たちはこのまま引き上げだ。再生者の回収は、専門の部隊があると聞いている」 「同じ局内でもわからない事が多いんですね」 「まあな。情報は厳しく管理されている。局員には任務に必要最低限の情報しか与えられない。2024年に起きたあの事件で、一時は労働者再生機構が解体寸前にまで追い込まれた。今でも再生処置に対する根強い反発はあるし、RATSも虎視眈々と狙っている。だから本部も情報漏れには敏感なんだ。局員に対する締め付けも厳しい。外部に情報を漏らしたりしないようにな」 「そうなんですね。それで、訓練所でもあんな……」 達也は言葉を濁したが、長内はあっさり言ってのけた。 「洗脳だろ? それも、局員をしっかり教育しておくためさ」 唖然とする達也を見て、話を横から聞いていた高村がにやりと笑う。 「たった2ヶ月の洗脳なんて、誰だって数ヶ月もすりゃ目が覚めるさ。でもその頃にはすっかり組織の歯車にがんじがらめにされてる。 全く良くできたシステムだよ」 「高村、そのくらいにしとけ。誰が聞いてるかわからん」 長内は箸を置いて、手で口を拭った。 「さて、帰りは肩の力を抜いていいぞ。奴らは再生対象者を乗せている時しか襲ってこないからな」
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