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「あの女、如月梨花(きさらぎ りか)って言うんだ。かわいい名前に似合わず、とんだサドだぜ」
「昔からの知り合いなのか」
「ああ。俺と如月はかつて同志だった。表では自己開発セミナーの社長をやりつつ、如月と組んで非労働者再生法に対する反対活動をしていた。その頃はまだ穏やかな組織だったんだ。デモを主催したり反対署名を集めたりしてね。当時リーダーだった俺は、反対の声を多く集めて国を動かそうとしていたんだが、如月は力ずくでの再生対象者解放に拘っていた。すれ違いが進むうちに、例の事件が起きた」
「バスを襲撃して、多数の死傷者が起きたあの事件か」
「そうだ。あの襲撃メンバーに如月の弟も参加していた。そして弟は射殺された」
ブッチは目を落とした。
「……それからあいつはより過激な組織を作り上げ、俺のもとを去っていった。弟の死があいつを狂わせたんだ。本当は信念を持った心の優しい女だったのに」
「ブッチ、もしかしてだが、如月はおまえの……」
「察しがいいね。そう、彼女だったよ」
達也は驚いた。かつて恋人だった相手にブッチは幽閉されている。こんな酷い姿になっても如月は何も感じないのだろうか。
「如月に、何を隠しているんだ」
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