1. 強制執行

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ハイ、ロッケンロール!!  今日も片っ端からぶっ潰してやるぜ。 俺、相沢有人(あいざわ ゆうと)は長く伸びたボサボサの髪を掻きむしりながら、端末を前に戦闘モードに入る。 ロックなんて知らないし、そもそも音楽なんて聴かないけど。 まあ、頭のスイッチを入れるおまじないの儀式ってやつだ。 しかし、真夏日が続いている事もあって暑い。 着古したランニング、短パン姿でも、全身から汗が噴き出す。 見慣れた匿名掲示板のサイトをざっと眺め、のんきに戯言をほざいている獲物どもを探す。 まあ、平日真っ昼間のこの時間に書き込んでいる奴だって、俺と同じニートくらいなもんだろうが。 馴れ合いでクソ平和なスレを探し出し、徹底的に荒らして場の空気を破壊する。 サイコーの気分だ。 まるで道すがら出会う、見ず知らずの奴らを、片っ端から殴りつけているようだ。 無駄に反論してくるバカには、トコトンやり返す。『完全論破。』これが俺の決め台詞だ。 『荒らしはほっとけ』というレスを見ると最高に興奮する。 反論できないカス負け犬野郎の、かぼそい遠吠えにしか聞こえない。 『コイツ人格障害じゃね?』   サイコー。もっと賢く煽れよ。 カタカタカタ。 『こんな時間に書き込んでるなんてどうせ無職だろ』   オマエモナ。  カタカタカタ。 3時間ほど、いくつかのスレに張り付き、ことごとく壊滅してやった。 勿論、俺の最後のレスは『完全論破。』 天井を見上げ、かすれた声で勝利の雄叫びを上げる。
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