第1章

2/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「おーっ、やってるやってる♪」 放課後。屋上で、私は双眼鏡を覗き込みながら呟いた。 レンズが捉えたのは、学年のアイドル的存在の安達怜奈と、不良として恐れられている谷崎翔。 そこは隣の校舎の四階の空き教室で、今はほとんど使われていない。 ーーが、たまーにこうしてゴシップネタになりそうな光景が転がり込んでくるという特典付き。 およそ縁のなさそうな彼らにどんな繋がりがあったのかは謎だが、そんなことはどうでもいい。 普段は清純派アイドル安達さんと、一匹狼谷崎くんのイチャラブシーンとか、もうそれだけでヨダレもんでしょ。 ……そんなことを考えながらニヤニヤしていると、レンズの中で、濃厚なキスシーンが始まった。 おお、完全二人の世界入っちゃってるよ。覗かれてるとも知らずに。 他人の秘密を覗き見するドキドキ感は、たまらない。 この味をしめて以来、私はほぼ毎日、屋上でこうして覗きをしている。 獲物はたまにしかやって来ないけど、それが余計に、当たりを引いたときの高揚感を引き立てる。 罪悪感なんてまったくない。 だって楽しいんだもん。ホンモノの恋愛なんかよりもずっと。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!