第1章

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始まりは一ヶ月前。 私は放課後、なんとなく屋上で、フェンス越しの景色を眺めながら、ぼけーっとしていた。 そのときーー え……っ? 思わず目を見張った。 四階の、誰も使っていないはずの空き教室に、誰かが二人、入ってきた。 何してるんだろう……? 食い入るように見つめても、彼らが何をしているのかはわからなかった。 次の日から、私は双眼鏡を持参して、屋上から、その空き教室の覗き見を始めた。 彼らの正体は、数日でわかった。 安達さんと谷崎くん。 そこでは、テレビや漫画でしか見たことないような、一組の男女のラブシーンが繰り広げられていた。 ヒミツの関係。 二人だけの世界。 そんな魅惑的な非日常の景色が、レンズの先にあった。 まあ、私が知ってる時点で、秘密でも何でもないんだけど。 このことを誰かに言いふらすつもりはない。そんなことをしたら、私のお楽しみまでなくなっちゃうから。 これは、私と彼らだけの、ヒミツの関係なのだ。
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