第1章

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「ねえ、この問題、教えてくれない?」 休み時間、安達さんがいきなり私の前に立って言った。 ドキッとした。今まさに、早く放課後にならないかな~なんて考えていたから。 「えっ?」 「次当たるんだ。お願いっ」 安達さんは両手を合わせて、片目をつぶって言う。なんとも女の子らしい仕草だった。私には絶対できない。 「う、うん……」 なんで私に?という気持ちを抑えて、丁寧に説明しながら数学の問題を解いた。 「ありがとう!説明上手だね。すっごくわかりやすかった!」 「そ、そうかな……?」 「実はね、ずっとあなたと話してみたかったんだ。なんだか私たち、気が合いそうだと思わない?」 思いません。残念ながら。まったく。 そんなことは口が裂けても言えないので、「そうだね」と適当に笑っておいた。 バカみたい。秘密を握られてるとも知らないで、ヘラヘラしちゃって。 私が写真でも撮ってバラしたら、あんたのアイドル的地位なんて一瞬で崩れ去るんだから。 ま、そんなことしないけどね。今のところは。
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