第1章

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あれ以来、私は双眼鏡を封印し、覗きをピッタリやめた。 何事もなく高校を卒業し、安達さんと顔を合わせることはなくなった。 なのに……今でもふとした瞬間に、なぜか、あのときの彼女の笑った顔が浮かぶことがある。 「ーーやめて!」 私は、顔を近づけてきた彼氏の身体を思いきり突き飛ばした。 後ろの壁に激突し、頭を強打した彼は、 「いってえな……何すんだよ!」 と怒鳴り、怒って帰ってしまった。 彼は、三度目の彼氏。今までの二人の彼氏にも同じことをして、同じ理由で振られた。 ああ、またやっちゃった……。 ここは私の部屋。窓も扉も閉まっているし、壁に穴でも空いてない限り、覗かれるなんてことは絶対にない。 なのに、どこからか、視線を感じるのだ。 そう感じた途端、何もできなくなる。 好きな人でさえ、拒絶してしまう。 ほら、今も…… あの子の視線から、私は逃れられないでいる。
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