スタイリッシュ粉砕

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  ──私が男だったら、 一発殴ってやるのに。 わずかに震える手を 見つめながら、 鼻の奥がつんと 痛くなってくるのを感じた。 泣くには足りないその痛みに じっと耐えながら、 あまりの情けなさに 思わず壁に頭を預ける。 心の中で韮沢を 何度も何度も責めながら、 彼をすごく好きだったことしか 思い出せないのがしんどい。 今日、 たまたまあんな人だったんだと 判っただけの話で。 韮沢に社長のお嬢さんからの アプローチがなければ、 私と彼は何の問題もなく 付き合いを続けてたんだろう。 だって、普通そんなこと 確かめないじゃない。 あなた、他にいい人が現れたら さっさと乗り換える人なの? とか。 およそ常人には理解できない 貞操観念持ってたりしない? とか……。 .
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