プロローグ

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  ふわりと近付いたその気配は、 いつも私を癒してくれる 紅茶の香り。 かすかに混じる 煙草の香りが、 やけに彼の中の男性を意識させた。 変なの。 煙草の香りなんて 慣れてるはずなのに。 「すみれさん、元気出して」 いつも優しく穏やかに 話してくれるその声に、 やたら重みのある熱を 感じるのはどうしてなんだろう。 近付く口唇が、 私の濡れた目尻をなぞっていく。 ちろりとくすぐるように 這わされた舌に、 いやだという気持ちは 湧いて来なかった。 .
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