スタイリッシュ粉砕

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  うまく理解が進まない。 とりあえず相槌は打てた。 他部署への異動でも 命じられた程度のことみたいに、 韮沢は軽々しく語る。 へらっと苦笑してるもんだから、 なんか私まで 「その程度のこと」に思えてきそうだ。 「社長のお嬢さん、綺麗でさぁ」 かちゃん、と ソーサーにカップが 置かれる音がやたら大きく響く。 韮沢はできる男のくせに、 プライベートで こういう細やかな気遣いができない。 もっと静かに置いてよ、と この3年何度注意したことか。 ……ああ、 聞いてくれない程度だったんだ、 私が。 韮沢にとって。 「聞いてる?」 「へ?」 現実から乖離しかけた思考を、 韮沢が引き戻す。 .
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