2641人が本棚に入れています
本棚に追加
うまく理解が進まない。
とりあえず相槌は打てた。
他部署への異動でも
命じられた程度のことみたいに、
韮沢は軽々しく語る。
へらっと苦笑してるもんだから、
なんか私まで
「その程度のこと」に思えてきそうだ。
「社長のお嬢さん、綺麗でさぁ」
かちゃん、と
ソーサーにカップが
置かれる音がやたら大きく響く。
韮沢はできる男のくせに、
プライベートで
こういう細やかな気遣いができない。
もっと静かに置いてよ、と
この3年何度注意したことか。
……ああ、
聞いてくれない程度だったんだ、
私が。
韮沢にとって。
「聞いてる?」
「へ?」
現実から乖離しかけた思考を、
韮沢が引き戻す。
.
最初のコメントを投稿しよう!