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美しく広がる星空。こういう空を満天の星空というのかしら、なんて思いながら、私は王宮のバルコニーで空を眺めていた。
空は、まるで地上の喘ぎなど興味なさそうに、今日も晴れている。昼も夜も、ここ何か月も雨が降った日を見たことがないのに。
そんなことに一喜一憂するのは、人間だけかもしれないって、私はふと思った。
「ねぇ、エリシュカ」
私は、いつも傍に控えている侍女の名前を呼ぶ。小さなころから一緒に育った私の友達。公的には侍女ではあるけれど。
エリシュカの家は代々王宮の重要なポストについている家系で、私とも年が近かったから、あまり同年代の人間と会うことができない私のために、エリシュカのお父様が、私のところへよく連れてきてくれていた。
エリシュカのお父様からしたら、将来王宮で働くことになるエリシュカのためにしていたことではあるのだろうけど、同年代の友達がいない私にとっては、とてもうれしいことだった。
エリシュカは唯一の友達であり、一番信頼がおける侍女でもあった。
「アルシェ、どうしたの?」
今は二人しかいないため、エリシュカは『アルシェ』と呼んでくれる。私の名前は、アルシェミーナ。普通はアルシェミーナ姫と呼ぶ。私はその呼ばれ方が好きではなかった。
だから、二人きりのときに限ってではあるけれど、エリシュカが『アルシェ』と呼んでくれるのは、本当に嬉しかった。
「私、踊ろうと思うの」
いきなりの発言に、エリシュカはとても困惑した顔をしながら、優しく微笑む。そして、何も言わずに、私の部屋へと入ってゆく。
長年一緒にいるから、エリシュカがお茶を淹れてくれるつもりなのだと察して、ゆっくりと待った。
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