舞姫

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「あたしが言っていることは、国民から見れば、おかしいのかもしれないわ。それでも、その国民たちだって、自分の身内が同じような目に合うとしたら、きっと、踊らせたいなんて、思わないはずよ」 あたしだって、踊らせたくないわ──そう言って、嫌がるエリシュカは、本当に私を心配してくれていることが分かる。それでも、王族であり、舞姫でもある私には、国民に尽くす義務があるのではないかと思う。確かに恥ずかしいけど…。 「私だって、『あの姿』は恥ずかしい。でも、自然災害が起きたときのために、私の中に眠る『力』があるのだとしたら、使わなければならないと思うの」 「アルシェはこの国の姫なのよ。見世物ではないわ」 「私は見世物になるわけじゃない。この国の繁栄のため、踊る舞姫よ。この国の発展のため、身を捧げることができるのなら、王族としても幸せなことだと思うの」 エリシュカをじっと見つめる。つまらない言葉より、私の本気をわかってほしいから。真剣なまっすぐな眼差し。きちんとできてるかしら。 「エリシュカにしか、頼れないの」 エリシュカが迷うように、私を見つめ返す。迷っているときは、すぐに分かる。わかってしまう。小さな頃から一緒だったから、エリシュカの癖は分かっているから。 エリシュカが私の本気を理解してくれて、助けてくれるのなら、何でもできそうな気がするから。だから、お願い。 私に力を貸して。 「私が『舞姫』として生まれたのは、この日のためかもしれない。だから…」 私は一生懸命、エリシュカに語る。 私が自分の意思で、こんなに真剣になることは珍しいのかもしれない。 「わかったわ、分かったから。もう、視線はずしてくれない?」 エリシュカは、根負けしたように、言った。 「そんな真剣な目で見るときなんて、あなたがあたしの言うことを聞かないときだけだわ」 そう言われて、ホッとした私は、話に一生懸命になって、ほとんど飲んでいなったハーブティーに口をつける。もう、冷めてしまっていたけど、すごくおいしいと感じる。 「アルシェが、大好きなハーブティーを飲まないなんて、どれだけ一生懸命だったの?」 クスクス笑いながら、エリシュカは言って。 「アルシェは、人に流されることが多いから、自分の気持ちを言ってくれて、安心したわ」 その後、また優しく微笑んだ。
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