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星空は美しく瞬き、満月が淡く輝く。
「今日になったら、奇跡が起こるかもしれない…なんていう期待は、するだけムダだったかもしれないわね」
どこか自嘲気味に、エリシュカは言う。
「私は、満天の星空が待っていると思ってた」
確信を持って、私は言う。
言葉ではそうは言っても、都合のいい未来を夢見ただけなのは、エリシュカだって分かっていると思う。
それでも、エリシュカは、私に踊ってほしくないし、踊らないで済む未来を望んでいたんだと思う。
それでも、私の意思を尊重してくれた。
もちろん、国を憂いているのは、エリシュカだって同じ。
「もし、言い伝えのように何かが起こるなら、あたしは今日を後悔しないと思うわ。でも、何も起こらなかったら──」
「いいの。私が『命令』したことにする。あなたを脅して」
私が説き伏せたんだから、当然。
確かに普段の私からは想像つかないかもしれないけど、そこまでエリシュカを巻き込むわけにはいかないから。
「罰は二人で受けましょう。あたしも同罪だわ」
それに、あの輝く宝珠をつけたあなたを見たくなってしまったんだもの──と、エリシュカは優しい笑みを湛えて、私に言った。
その言葉に勇気をもらった私は、宝珠を喚んだ。
眩い光が奔流となって、辺りを包み込む。目なんて開けていられない。
だけど、私には普通に世界が視えた。
「エリシュカ、大丈夫?」
「眩しくて、何も見えないわっ」
少し混乱しているようで、語尾がいつもより上がって聞こえる。
「でも、今しかない。アルシェ、行って!必ず、成功させるのよ」
「ありがとう、エリュシカ」
そう言って、私は駆け出す。
でも、今着ているドレスでは、走りにくい。そう思った瞬間、私はためらうことなく、宝珠のヘアアクセサリーを、額の上になるようにつけていた。
辺りは光り輝いたまま、私の周りにある光が、宝珠へと吸い込まれてゆく。
一定量光を吸った宝珠は、また激しく輝き、私の身に着けていた服を、全てかき消してしまう。
『あの姿』へと変わった私は、一糸纏わぬ姿で、王宮を駆け出してゆく。
でも、私以外の人は眩しくて目を開けていられないのか、近くを私が通っても、誰一人として、私に気づくことはなかった。
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