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やっぱり恥ずかしい…。
そう思っても、もう外すことなんてできない。
今、宝珠のヘアアクセサリーを外すと、私を視界に捉えることができる人たちが、この姿を認識してしまうのはもちろん、舞うこと自体ができなくなってしまう。
だから、そのままの姿で私は走り続けた。
長い長い王宮の階段を下りて、長く続く広大な庭園を駆け抜ける。
その間に、また光が収束してきて、かき消されたドレスのように光が私の身体を包み込む。
私が走った軌跡に、キラキラと光の帯が残る。それはまるで彗星のように。
王宮から伸びるメインストリートを進むと、開けた広場があって、そこが私の目的地。
昼間は、民が集い、祈りを捧げる小さな神殿がある。
大きな神殿は、王宮の裏にある山の頂にあるから、なかなか普段から祈りに行けるわけがない。忙しいときや体調が悪いときなどは、この小さな神殿で祈りを捧げている。
その神殿を真ん中に配置した広場。
そこは、白い石で造られている。
白は神聖である証と言われ、神殿と一体となる広場も白となるように作られたと言われているけど、本当の理由は誰にも分らない。
この神殿を作った、時の王でなければ。
だけど、私は知っていた。
この日のために、この広い空間を作ったのだ。
この世界には、白の広場が三ケ所ある。
それは、私たち舞姫が舞うために作られた。
伝説を信じた時の王が、私たちが舞うために。
舞の力を、一番引き出せるように、神聖なる白の広場を作ったのだと、今日この日に、私は知っていた。
宝珠のヘアアクセサリーがそう思わせるのだろうか。
そんな疑問を抱きながらも、私の身体は動いていた。
舞う。何かに引き寄せられるように。
この舞を学んだわけではないけど、私は舞う。
何かに導かれるように。光の軌跡を描きながら。
それは、魔法陣となり。
宝珠の中に描かれている魔方陣と強く共鳴しているようだった。
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