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女の子がフッと顔を上げる。綺麗な顔立ちだ。瞳孔がシュッと縮んだように見えた。
え?なんだ?今の……
ネコだ!人間じゃないのか。心臓がドクンと脈打つ。さっきの猫が化けたのか……
いじめた訳じゃないぞ。君を助けようとして……
いや、違う。女の子は子猫を抱いていた。茶色の毛玉だ。なあんだ。茶色の毛玉が鳴いただけか。
「あなたのネコ?」女の子は立ち上がると、唐突に訊ねる。真っ白な肌。青みがかった瞳。なんか異国情緒溢れる…いや、その表現はちょっとおかしい。
コケティッシュな魅力?それもちょっと違う。
女の子はじっと俺を見つめたまま、俺の答えを待っているようだ。
老成した瞳が怖い。
落ち着き払った瞳。何故だろう?こんな小娘なのに……
俺はちょっと狼狽えた。
「ああ。そうだ!エキゾチック……」俺は思わず声に出した。この娘はなんだか日本人離れしている。ようやく符号する単語が脳裏に浮かんだ。
「え?なんのこと?」女の子が不審げに小首を傾げる。
そうだった。俺は女の子の問いに答えていなかった。
「いや、なんでもない……。そうだ。それは俺の猫だ」女の子に歩み寄る。
茶色の毛玉がニャーと鳴いた。
女の子の何もかも見透かしたような瞳が非難の光を帯びている。
「あなたのネコじゃないでしょう」
そうだ。なんだよ。じゃあ、聞くなよ。
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