月と猫と少女

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幸せというのは落差だ。と俺は思っている。谷深ければ山高し。落差が大きければ大きいほど幸せ、あるいは不幸の度合いも大きくなる。と思う。 え?不幸?不幸は必要ないんじゃね?と思うかも知れない。 仮に宝くじに当たったとする。大きな落差だろう。でも幸せを感じていられるのは最初の半年だけだと言う。なぜなら金があることに慣れてしまうのだ。金などパーと使うのが一番だ。貯蓄などバカらしい。またどん底へ落ちればいいのだ。 つまり、幸せとか不幸というのは相対的なもので一瞬の落差なのだ。その一瞬にこそ真実があり、その中では人生の走馬灯がグルグルと回っているに違いない。 天国から地獄へ。そしてまた地獄から天国へジェットコースターのようなスリルが俺の中の野性を呼び覚ます。俺は今、借金取りに追われながら女の家を転々としていた。借金取りに捕まればタダでは済まないだろう。でも、もちろんこの境遇を嘆いてはいない。また一発当てればいいのだ。 こんな俺にはおかしな夢があった。それは到底、人には理解されないだろう。俺は誰にも俺の夢を語ったことがない。
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