月と猫と少女

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俺はフラフラと夜の街を歩いていた。だいぶ酔った。 街の灯りが虹色の弧をまとい、街並みが濡れたような光沢を放っている。さっきまで霧のような雨が降っていたが、どうやら上がったようだ。気味が悪いくらい大きな満月がビルの間から覗いていた。 腕を組んで歩くカップル。大きなダンボールを台車でガラガラと音を立てながら運ぶ黒猫ヤマトのお兄さん。 人通りが激しい。道幅いっぱいに歩きながら今夜のナイターを論じ合うサラリーマン集団。俺はヨロヨロとサラリーマン集団に吸い込まれるように近づいていき、ぶつかりそうになった。
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