【6】加奈江は嫁ぐ

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親・きょうだい 政が言った「明日」は、そのまんま、読んで字のごとし。 近い将来の約束ではなく、今すぐ、という意味だった。 えええ? と加奈江は焦ったが、政はすましたもの。 「はい、って言ったじゃないか」と言う。 言った。言いました。けど! 「私たちはまだ学生だし」 「うん、だから苦労かけるかも、と。でも、仕事の目処もついたことだし」 「けど、それはお教室を任されるかも、ってことでしょう?」 「ああ、そうだ。言い忘れていたけど、今度の展示会、俺、特賞取ったんだ。今までより多く賞金も出るし。子供の頃から貯めてたし、今までもらったのも手つかずで貯金してるから、無一文でもないよ」 と言いつつ加奈江へ差し出した通常の残高は、学生にしては破格で一財産と言ってよかった。 すごい、ここまで貯めたの? 妙なところでしっかりしている。加奈江は政の知らない一面におどろく。 いや、しかし! 「学内でも結婚してる学生はいるんだし」 「それはその通りだけど」 「嫌なんだ」 「え?」 「お前、本当に気づいてないのか? 同じ学部の、誰とは言わないが、あいつらに人気があるって……狙われてるって」 目をぱちくりさせて彼女は応える。またいつもの我が儘だわ。 「まさか、そんなはずないわよ」 「ある」 「ありませんって」 「俺がある、って言うからあるんだって!」 ムキになって言う彼はまるで子供のようだ。そして、結論をごにょごにょと言葉をにごすのもいつものこと。 「とにかく……このまま、お前を大学に置きたくないくらいなんだ、わかってくれよ」 それこそ子供が我が儘でごねているようだ。でも。 彼が彼女に、何かを強く願うことはあまりなかったし。 加奈江も望んでいた未来だったから。 今すぐという彼のプロポーズを受け入れた。
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