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「時間も時間だし。双葉の言う通り、昼でも食べるか」
「賛成! ぼく、お腹ぺこぺこだよ!」
「どこにする?」
三男に続き、長男も同意する。
「俺、ロールキャベツがいい!」
次男は腕組みして言う。
「ろーるきゃべつう?」
「ここに上がってくるエスカレーターから見えたんだ。俺、アカシアのロールキャベツ、大好物」
「何でわざわざ羽田で食うかな」
「いいだろ、一馬。美味いし安いんだから!」
「安い、ってでっかい声でいうなよなー」
「じゃあねじゃあね、ぼく、双葉が好きなロールキャベツにしてあげるー」
「三先、むかつく!」
「わかった、じゃ、昼はアカシアだ」
父親の言葉を受けて、子供たちはそれぞれの足で下の階へ向かった、ロールキャベツ! ロールキャベツ! と口々に言い合いながら。
シニカルではないため息を同時に漏らした父と母は、お互い視線を交わし、笑みを浮かべる。
先に立っていた慎一郎は、さあ、と手を妻に差し出した。
彼の手に自分の手を委ねて腰を上げた妻の指へ、自分の指を絡めて。
引き上げた彼女へ顔を寄せ、「続きはまた後で」と言って。
慎一郎は自分の妻に口づけた。
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