追い風1000km・3 お母さんのおでかけ

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「時間も時間だし。双葉の言う通り、昼でも食べるか」 「賛成! ぼく、お腹ぺこぺこだよ!」 「どこにする?」 三男に続き、長男も同意する。 「俺、ロールキャベツがいい!」 次男は腕組みして言う。 「ろーるきゃべつう?」 「ここに上がってくるエスカレーターから見えたんだ。俺、アカシアのロールキャベツ、大好物」 「何でわざわざ羽田で食うかな」 「いいだろ、一馬。美味いし安いんだから!」 「安い、ってでっかい声でいうなよなー」 「じゃあねじゃあね、ぼく、双葉が好きなロールキャベツにしてあげるー」 「三先、むかつく!」 「わかった、じゃ、昼はアカシアだ」 父親の言葉を受けて、子供たちはそれぞれの足で下の階へ向かった、ロールキャベツ! ロールキャベツ! と口々に言い合いながら。 シニカルではないため息を同時に漏らした父と母は、お互い視線を交わし、笑みを浮かべる。 先に立っていた慎一郎は、さあ、と手を妻に差し出した。 彼の手に自分の手を委ねて腰を上げた妻の指へ、自分の指を絡めて。 引き上げた彼女へ顔を寄せ、「続きはまた後で」と言って。 慎一郎は自分の妻に口づけた。
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