城所さんと秋生君

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仕事が終わると、店まで迎えに来てくれている円さんと一緒に家に帰る。 俺と、円さんが暮らす家に。 「そうだ、今日はお土産があるんです」 「お土産?」と俺が首を捻ると、円さんがクスクス笑う。 「お土産って何?」 繋いだ手をギュッと握り、円さんは人差し指を口唇に当て。 「帰ってからのお楽しみ、ですよ」 それ以上は教えてくれなかった。 街灯だけが灯る薄暗い道を、円さんと俺はいつも手を繋いで帰る。 誰かに見られる所か、擦れ違う人すら居ない。 真っ昼間だったらこうして手を繋いでなんか歩けない。 恥ずかしい、というのとは少し違う。 後ろめたいんだ。 円さんまで、他の人に変な目で見られるのが嫌だから。 まぁ、それを円さんに話したら「他人の目なんて気にしてません。貴方の方が大事です」なんて言われちゃったけど。 正直言うと円さんと手を繋ぐのは好き。 触れているだけで安心するから。 .
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