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まさか自分の身にこんなことが起こるとは。ドラマや漫画でしか見たことない。通学前、曲がり角で美少女とぶつかるって。
ただ、パンじゃなく炒飯を持っていたこと、そして地面に尻餅をついた自分の頭に見事に炒飯が乗っていることは除くが。
「すいません!急いでて!大丈夫ですか?」
サクッ。
「何で旗刺したんだよ!お子様ランチか!」
今、俺の頭には炒飯と日本の旗が置いてある。
「あっ…。もしかして、アメリカの旗の方が良かったですか?」
「旗の種類の問題じゃないから!まず起こせよ!こっちこけてんだよ!…大体、何で炒飯なんて持って外走ってんの。」
何故か頭の上の炒飯を落とさない様、慎重に起き上がり彼女と対面した。改めて見るとツインテールに童顔、可愛いと思いつつ、自分と同じ制服を着ていることに違和感を感じた。
(転校生か…?)
こんな展開、あり得るのか?などと思いつつ、目先の疑問にしか頭が回らなかった。炒飯って。
「もしもの時のために…。」
「もしもの時って何だよ。」
「もしも、こう銃で狙われた時に」
「(あー、面倒なタイプか)狙われた時に?」
面倒臭そうに答えた。
「刑事ドラマみたいに炒飯を銃弾が貫通して」
「はい。」
「…そして弱った銃弾が私が着ている対生物用パワードスーツで止まる、みたいな。」
「君そんなもの着てるの!?炒飯いらないだろ、パワードスーツで十分防げるでしょ!」
「とにかく急いでるので!ごめんなさい!」
スタッと彼女は居なくなった。俺は怒るよりも不思議な感覚にとらわれ、また、結構可愛い娘だったな、と考えていた。
そうして彼女は、優しく香る香水の匂いと炒飯を残して俺の前から去っていった。
炒飯を片付け、無事学校に着いた俺は、またも不思議な体験をすることとなった。黒板には龍崎明日香の文字、先生の隣で教壇に立つ少女。まさにドラマの様なー
「転校生の龍崎明日香です。よろしく…って、あれ?」
「ええと…、マジで?」
「道端で頭に炒飯乗っけてた人!」
「あれはお前に乗っけられたようなもんだろ!変態みたいに言うな!」
「久しぶり、全然変わらないね。」
「まだ出会って数十分しかたってねえから!」
こんなことがあるのかなー。ただ、再開の一言が炒飯とは、なんとも野暮ったい話ではあるが。
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