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わざわざメモを指差し訊ねてくる安田課長に、顔を引きつらせた。
突きつけられる自分が残した証拠に、被害者である笹木が傍にいて、この感じはそう。
――まるで公開裁判みたいだ――
「あ、の……面白いとか、そんなんじゃなくて、ですね……」
真実を言ったら、罪状を告げられるのだろうか? 無実はありえない。実際、このふたりを陥れようとした。
僕は:有罪(ギルティ)なんだから――。
「安田課長、その話は食事が終わってからでいいですか? せっかくのカレーが冷めちゃいます」
美味しそうにカレーをぱくぱくと口に運ぶ笹木が、助け舟を出してくれた。
「お前は、気にならないのか。このメモの意味を?」
「まぁ、何となくですけどね。本当のことを知るのはカレー食べ終わってからでも、問題はないでしょう?」
安田課長に食べろと促し、膝の上に置いていた震える僕の左手を、そっと握りしめてくる。
「お代わりあるんで、遠慮せずに食べてください」
「あ、うん……」
「香坂先輩のことをずっと見てたから、。俺は分かっているつもりです」
優しく声かけするなり握りしめた左手を更に握ってから、すっと離した。
笹木から与えられたあたたかさのお蔭からか、不思議と震えが止まった。それだけじゃなく躰が熱くなるのは、どうしてなんだろうか――?
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