裁判記録:だから僕は――

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***  就業時間5分前に、笹木の席に赴いてやる。 「なぁなぁ、仕事終わった?」  ぽんっと肩を叩きながら、顔を覗き込んでやった。途端にうっすらと頬を染める後輩の姿に、自然と笑みが浮かんでしまう。  自分の美貌は、男女問わずに効くことが分っているからこそ、有効活用すべく存分に使っている。こうもあからさまに頬を染められると、嬉しくてならない。 「香坂先輩、お疲れ様です……。あの、顔が近いですけど」  小さな目を瞬かせながら、くっと顎を引き、おずおずと僕を見上げた。  短く刈り上げられた髪型は、笹木の清潔感をより一層引き立てていて、自分よりも少しだけ大きい躰からは、適度に甘く爽やかでセクシーな香りが漂っていたので、くんくん嗅いでやる。 「だーって、笹木からいいニオイがしていたから。お前、こんなのつけていたっけ?」  ニヤニヤしながら肘で突いてやると、忙しなく視線を彷徨わせた。 「からかうの、やめてくださいよ。困ります」 「からかってないって。それって、彼女に貰ったものなんだろ? 青春してるねー、笹木ってば」 「……そうですよ。まったく、香坂先輩には敵わないなぁ。あざとすぎます」 「そんで、いいニオイをぷんぷんさせながら、仕事は無事に終わったのか?」  キツいニオイに鼻がやられそうになったので、さりげなく躰を離したら、やっとこっちを向いた。
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