裁判記録:君も有罪(ギルティ)

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「さすがは下田先輩が、熱を入れるだけのことがある人だなって、めちゃくちゃ感心しました。安田課長の千里眼は、本当にすごいですね。作戦開始からわずか3日で、香坂先輩が引っかかるなんて」 「下田のことなんて知らん。香坂が引っかかったのも、たまたまだろう」 「たまたまなんて、謙遜しなくていいです。それに下田先輩から安田課長がすごいこと、いろいろと聞いてるんですよ。同性が好きなんて話、他の人にはできませんからね」 (コイツ、どこまで知っているのか……)  口をつぐんで腕を組んだら、嬉しそうな顔して、聞いてもいないことをぺらぺら喋り出す。 「下田先輩に香坂先輩が好きだってバレたときは、肝を冷やしたんですけど、俺は安田課長が好きなんだぜって、ぶっちゃけられたときは、すごく驚きました。落したい相手だからこそ、なかなか手が出せないよなって、お互い盛り上ったりもしましたね」 「……くだらない」  鼻であしらいながら、呟いてやる。タバコ片手に饒舌に語る笹木は、見ていて滑稽な存在だ。 「安田課長にはくだないことかもしれませんが、俺たちは本気なんです。だから下田先輩、安田課長と一緒に出張に行けて、喜んでましたよ。変な替え歌を作っちゃうくらい」 「それこそ、くだらない話だな」 「確かに。隣の席で替え歌をエンドレスで歌ってくれるものだから、困り果ててしまったくらいですよ。しかも出張先でふたり、何かあったんでしょ?」 「あってたまるか、男同士なのに」 「だけど出張後、おふたりの距離は明らかに縮まっていましたよ」 「……下田の仕事のできなさに、発破をかけただけだ。その期待に応えてくれた結果を普通に褒めていた様子が、そういうふうに見えただけなんじゃないのか?」 「意味深に微笑み合っている様子は、どこから見ても、恋人同士みたいでしたけどね」    ふーっと紫煙を吐き出し、煙草を灰皿に押し付ける姿を、ぼんやりと眺めた。  否定すればするだけ、肯定しているようにも見えるか。  そう考え黙っていたら、唐突に自分の耳を指差してくる。 「あとね俺、聞いてるんです。下田先輩が転落死したときに、音をふたつほど」 「音?」 「はい。安田課長、言ってたじゃないですか。下田先輩がもたれたフェンスと一緒に、落ちていったって。一緒に落ちたハズなのに、随分と間があったような――」
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