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「……見られてたんだな」
「……見られてたんだね」
……人生で初めてもらったラブレターがこれって、どうなんだろう?
というよりも
「見られていただなんて……っ!!」
お嬢様・斎藤亜紀(さいとう・あき)、一生の不覚……っ!!
「いい機会じゃん。
付き合っちゃいなよ。
あんたもお嬢様の化けの皮被るの、疲れたでしょ?」
「そんな訳にはいかないわよぉっ!!
私がみんなに『お嬢様』っていうイメージを植え付けるのにどれだけ苦労してきたか、知ってるでしょーっ!?」
みんなに彼氏ができていく中、自分にだけ彼氏ができなかった、中学時代。
亜紀は美人だよね、すぐに彼氏できるよ、という言葉を鼻にかけていたつもりはなかったけれど、自分にだけ彼氏ができないのは、悔しかった。
だから高校では、モテ女になろうと思った。
男ならば誰もが惚れちゃう、ハイスペックお嬢様になろうと思ったんだ。
それなのに……っ!!
「よりにもよって、ソーラン節かよっ!?」
「ええやん、亜紀ちゃん時々、与作とか歌ってるくらいやし。
それよかマシやろ?」
「そりゃそうだけどっ!!」
亜紀の本性を知っている友人二人は、亜紀のかつてないピンチを前に呑気にポッキーをかじっている。
「観念したらどうなん?
亜紀ちゃんは、素の時が一番別嬪さんやね」
しまいにはそんなことまで言われてしまった。
その隣でもう一人の友人も『うんうん』と頷いている。
ここに味方はいない。
「うわぁーんっ!!
ともみ も 由香子もわからず屋ーっ!!」
「そんな大声出して走ったら、他の人にも素がバレるわよ」
「部活、頑張ってぇな~」
結局二人の言葉に送り出されて、亜紀は逃げるように部活に旅立ったのだった。
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