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ソーラン節
北海道発の民謡。
ニシン漁の際に歌われた労働歌。
誰よりも早く着いてしまったせいで閑散としいてる部室で一人、亜紀はソーラン節の譜面を睨みつけていた。
畳敷きの部屋にズラリと並べられた箏は、触れる者がいなければシャナリとも音は鳴らさない。
お箏で引く曲を『箏曲(そうきょく)』という。
だから亜紀が所属する部活の名前は『箏曲部』だ。
お嬢様のイメージを与えるのにもってこいだと思ったのが入部の動機だが、最近は箏を弾くこと自体が楽しくなっている。
亜紀は箏爪をはめ、調弦を確かめた。
そのまま指の運動もかねて、ソーラン節を爪弾く。
最近はダンス用に編曲された『ロックソーラン』の方が有名で、『ソーラン節』と聞くと激しい曲調だと思われがちだが、原曲のソーラン節はのびやかで、どこか牧歌的だ。
最初の方で船べりに打ち付ける波を威勢のよい音で表現し、船が沖へ進んでいく様を思い浮かばせる。
パッと網が翻り、その頭上をカモメが舞う。
見たこともない、遠い海で行われるニシン漁。
その光景を脳裏に浮かばせている間に、漁師が口ずさむ歌が挟み込まれる。
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