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「俺は、本物の斎藤が知りたい。
ソーラン節を歌うあんたに、恋をした。
俺と付き合ってくれないか?」
想像もしない相手から告げられた、人生初めての告白。
憧れていて、そのためにお嬢様という化けの皮を被ってきた。
後はしとやかに『はい』と答えるだけで、今までの苦労は報われる。
「だ……っ、な……っ!!」
「ん?」
「何で『知りたい』からいきなり『付き合おう』になるのよっ!!」
だが亜紀の口から飛び出てきたのは、自分の想像をはるかに超えた一言だった。
「そもそも『興味持った』と『恋をした』は別次元なのよっ!!
そんな動機で付き合おうとか言うんじゃないわよっ!!
乙女のドキドキはそんなに安くないのよっ!?」
指をつき付けて、悲鳴のように叫ぶ。
いきなり悲鳴を叩き付けられた高倉は、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情でぱちくりと目をしばたたかせた。
「そもそもラブレターに名前も書かないって何なのよっ!?
告白以前に礼儀の問題でしょっ!?
家元って、その辺りの礼儀作法うるさいんじゃないのっ!?」
だがそんな表情を向けられても、亜紀の勢いは止まらない。
頭の中では『ヤバイヤバイヤバイ』というフレーズがノンストップで巡り巡っているのに、叫ぶ唇は止まってくれない。
「舐めんじゃないわよっ!! バカッ!!」
最終的には、ただの暴言になっていた。
ゼー、ハー、と肩で息をする亜紀の前で、高倉の肩がピクリと揺れる。
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