第1章

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………………おぉ。 「モダン焼き、だな」 「モダン焼きだね」 コヘ、コーの言う通り、まごう事なきモダン焼きだ。 香ばしいソースと、鰹節の揺らめきが食欲をそそるぜ……ジュルリ…… さて、説明しようか。 『料理長の日替わりメニュー』とは、別名『料理長の気まぐれメニュー』なのである。 中身は運ばれて来るまで、明かされない。 完全に料理長の気分によって、作られる。 故に、料理人としてどうかとも思うが、食べる側が一切考慮されないことになる。 コヘは1年の時、5時限目が体育祭の練習であることを忘れて、これを注文し、『アサリのサッパリパスタ』が出てきた。 アサリに対する認識が変わる程美味しかったらしいが、直ぐに空腹になり困ったと言う。 コーは、練習していた演目の役柄が、貧乏で常に空腹を訴えている人物だった時に、豪勢にデザートまで付いたカツカレーを引いた。 その日の演技には、中々気分が乗らなかったらしい……。 ただ、物凄く美味しい料理であることは、120%保証される。 かと言って、他のメニューの味が劣るのかと言えば全くそんなことはない。 だから、安全に安心して自分の好きなモノを食うか、 ちょっとした冒険で、最上級の美食を食うか…… 決断が遅すぎても、限定10食が無くなってしまうかもしれないと言う焦りが加わって、 『料理長の日替わりメニュー』がある日はメニュー選びが難しい。 とまぁ、こう悩むのは実は少数でもあるけどな。 お金持ちのお坊ちゃんたちは、『自分の気に食わないこと』に対する耐性が、ほとんど無い。 自分の食べたいモノ以外が出てくるなんて、論外。 とでも思ってるんだろうな。 そう言う生徒がこれを注文しているのを見たことがない。 コーは、金持ちと言えど割と庶民派の考えに近い。 曰く両親が金を掛けるのは、役者に関することばかりで、日常的には、一般家庭となんら変わりはなかった、と。 コヘは平凡な一般家庭からの、俺と同じく特待生だし言わずもがな、だ。 2人もたまに頼むが俺は毎回必ずだから、チャレンジャーと言われるんだ。 「まぁ、ソースの気分じゃないって時以外は、当たりじゃね?」 「うん、朝もモダン焼きだったって時以外は、当たりかもね」 被るなら普通、昨日の晩飯だろ……。 ま、何はともあれ、 「「「いただきます!」」」
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