第2章

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始業式の翌週の月曜日。 朝のHR開始まで後5分。俺は机に突っ伏していた。 「山中君、どうしたの?元気ないね」 話しかけているのは、なんと寿君。彼の席は廊下側から2列目、後ろから2番目。俺の席とは離れているが同じ後ろから2番目と言う、ある意味一直線上にいる訳で。 俺の様子が目に入り、声をかけてくれたらし…… 「野瀬ちゃんと喋ってたんだけどさ、野瀬ちゃん今眠いらしくて、1人で暇なんだよねー」 ただの暇つぶし要員だった…… 野瀬君が今どういう状態でいるのか分からないけど、俺だって机に突っ伏しているんだから、眠そうだとは思わなかったのか? 「別に、元気がないって訳じゃないんだ」 まぁ、そして眠くもない。 「でも、明らかにテンション低いよね? いつもなら、俺と野瀬ちゃんの絡みを、飽きもせずに眺めてるくせに」 結局、寿君と野瀬君の馴れ初めは『幼馴染』の一言に尽きた。 詳しい話を聞こうにも、主に寿君が明らかに話をはぐらかそうとしたから、まぁ聞かれたくないことでもあるんだろう、と言うことで俺からもそれ以上は追及しなかった。 2人の過去に何かあったのか。 もし、それを知ったらさらに妄想が膨らむかもしれないが、今、俺の知りうる限りで、この2人が幸せそうに寄り添ってるんなら、俺が口を出すべきところではないし、何より現状だけでも2人からは、十分すぎる萌を提供してもらっている。 初日に撮った写真は、野瀬君のスマホに送信済み。 「リン、可愛い……ありがと……待ち受けに、する」 とのことだ。 いつも眠そうで、それ以外の表情を浮かべない野瀬君が、一瞬、画像を見て微笑んだんだが……あれは、萌死ぬかと思った。 ホント、あの2人の相思相愛ぶりが、美味い。 白米が3杯いける。 「うん、ホント寿君たち目の保養。もっとやってくれ」 「オッケー、お安い御用だ。 じゃなくて、元気がない訳じゃないなら、どうしてテンション低いの?」 聞きたい? 本当に、聞きたい? 「え、何?そのちょっと期待の混じった、それでいて『でも、どうせお前もなんだろ?』って言う諦めの目は」 考えてもみてくれよ、わざわざ寿君の目に止まるほど気落ちしてる俺に、いつもつるんでるコーやコヘが何のアクションも見せない訳を。 いや、別に親友がいつ何時でも傍にいて、心配してくれるような、都合のいい存在だと思っているわけではない、決して。
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