【6月19日】 午前8時00分

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 数日間降り続いた梅雨の長雨も嘘のように上がり。久しぶりに顔を見せた太陽は、うっぷんを晴らすかのように、大地を照らしつけている。  気温も六月の下旬にしては涼しく、季節が一つ戻ってしまったように感じられた。天気予報によると、この晴天は、あと四、五日続くようだ。 「おはよ~。ちゃんと勉強した?」  登校中の和磨の背後から、自転車に乗った寺音がさっそうと現れた。  徒歩の和磨にあわせ速度を落とす。 「よお、寺音。今日は蘭と一緒じゃないのか?」  いつも目の敵にされバイ菌扱いしてくる蘭の不在に、和磨は安堵の表情を浮かべるが、うっかり寺音の地雷を踏んでしまった。 「もう! 寺音って呼ばないでよ。名前で呼ぶの、和磨だけなんだからね」 「別にいいだろ? 小学生の時は名前で呼んだって何も言わなかったくせに」 「いつの話をしてるのよ。私がこの名前嫌いなの知ってるでしょ」 「たしか、寺音のおやじさんが考えたんだっけ? 神社の娘に寺って字を入れるなんて、なかなか洒落が効いてていいと思うけどな。ははははは」 「…………」  能天気に笑う和磨をギロリと睨み、寺音は無言の圧力をかけている。 「うっ、いや、あ、あのさ」  恐らくこのパターンだと、三日間は口をきいてくれそうにないだろう。  和磨がたじろいでいると、同じクラスの光条すず子(こうじょう すずこ)が現れた。 「おはよ、月ちゃん……あと、和磨くんも」  寺音の隣に自転車を並走させるすず子は、恥ずかしそうに笑みを浮かべている。  クラスでは一番小柄でおとなしく、かなりの人見知りであった。
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