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「あっ、おはよう、すず。めずらしいじゃない、声をかけてくれるなんて。でも、うれしい。なんか久しぶりだね。一緒に学校へ行くのって。あ、そうだ。ねえねえ、あれどうなったの?」
寺音は和磨の存在も忘れ、すず子との会話に夢中になっている。
ふたりは小学校からとても仲が良かったのだ。
ところが、高二の時に蘭が現れて以来。例のごとく押しの強い蘭が、寺音に付きまとうようになってしまい。気の優しいすず子は遠慮して、自分から距離を置くようになってしまったのである。
今朝はたまたま蘭の姿がなかった為、声をかけることができたのだった。
「じゃあね、和磨。ごゆっくり」
「え? お、おう」
寺音とすず子は、自転車の速度を上げ走り去ってしまった。
――ゾクリ。
ふと、遥か先に見える学校を眺めると、和磨の背筋に悪寒が走った。
「なんだ? この感じ……」
しかし、苦手な英語のテストへの不安だろうと気を取り直し、歩を早めるのであった。
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