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四限目終了のチャイムからほどなくして。
校内は生徒たちの姿が無くなり、不気味な静けさが訪れた。雨脚は弱まりつつあるが、止む気配はなさそうだ。
放課後は部活に勤しむ生徒たちで賑わうはずの部室棟も、今日は鳴りを潜めている。
しかし、誰もいないはずの部室棟に五つの人影があった。
その影は人目をはばかるようにして、バスケ部の部室へと入っていく。
「……さてと。冬彦、今月の分を出せよ」
長身の男子生徒が部室の鍵をかけ、気の弱そうな男子生徒に詰め寄った。
床にはバスケットシューズの片割れや、バスケットボールが乱雑に転がっている。
「も、もう、僕。お金がないんだ……」
カバンを大事そうに両手で抱え後ずさる男子生徒は、和磨たちと同じ三年八組の闇延冬彦(やみのべ ふゆひこ)であった。
身長はそこそこあるのだが、運動をしても筋肉が付きにくい、貧相な身体つきである。
「ああ? そんなことは聞いてねえよ。お前も元バスケ部だったんだからよ。俺らに納税する義務があんだぞ、こら!」
身長百八十センチを超す男子生徒四人が、冬彦を取り囲む。
入学してすぐの仮入部が、冬彦にとって運の尽きだった。
見るからにひ弱な冬彦が、この同学年の四人組みに、目を付けられてしまったのだ。
はじめはパシリ程度に使われていたのが、二年の夏休みあたりから、次第に金銭の要求が激しくなっていった。
「ほ、本当にもう無いんだよ。貯金してたお金だって全部……」
消え入りそうな冬彦の声に、バスケ部員たちの眉が吊り上る。
「知らねえっつってんだろ! 無けりゃ親の財布から盗んで来いよ!」
バスケ部員の一人が冬彦の胸ぐらを、ボタンを引きちぎる勢いで掴み寄せた。
その拍子で冬彦の抱えていたカバンが床に転がる。
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