【6月18日】 最後の日常

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「何か金目の物もってねえのか? あればそいつを売って金にしてこいよ」  別のバスケ部員が冬彦のカバンを拾い上げ、中身を床にぶちまけた。  教科書やノートの他に、ドサリと重量感のある音を立て古びた本が床に落ちた。  所々黒ずんだ表紙には、知っているどの言語とも違う、見たこともない奇妙な文字が描かれていた。 「何だこの汚ねえ本は? また妙なもん持ち歩きやがって。気持ち悪りい奴だな!」 「うわあっ」  突き飛ばされた冬彦は背中を床に打ち付けた。  バスケ部員たちが古びた本を無造作に開く。そのページには円形の複雑な図と、ミミズが這いずり回ったような文字がびっしりと描かれていた。 「……ん? これってあれじゃね? よくアニメとかに出てくる」 「くくく、ひょっとして魔法陣ってやつか?」 「ははは、ウケるぜ冬彦。お前魔法使えるのか?」  バスケ部員たちが一斉に嘲り笑う。  立ち上がった冬彦は唇を噛みしめ四人を見やった。 「てめえ! なんだその顔は? ムカつく面しやがって! 殺すぞ!」 「――ぐはあっ」  バスケ部員が放つ鋭いボディブローが冬彦の腹を襲った。  その衝撃に耐えられず、冬彦は身体をくの字に曲げ膝から崩れ落ちる。  大きく開いた口からは、胃液と唾液が一緒になったものが、だらだら滴り落ちている。
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