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「何か金目の物もってねえのか? あればそいつを売って金にしてこいよ」
別のバスケ部員が冬彦のカバンを拾い上げ、中身を床にぶちまけた。
教科書やノートの他に、ドサリと重量感のある音を立て古びた本が床に落ちた。
所々黒ずんだ表紙には、知っているどの言語とも違う、見たこともない奇妙な文字が描かれていた。
「何だこの汚ねえ本は? また妙なもん持ち歩きやがって。気持ち悪りい奴だな!」
「うわあっ」
突き飛ばされた冬彦は背中を床に打ち付けた。
バスケ部員たちが古びた本を無造作に開く。そのページには円形の複雑な図と、ミミズが這いずり回ったような文字がびっしりと描かれていた。
「……ん? これってあれじゃね? よくアニメとかに出てくる」
「くくく、ひょっとして魔法陣ってやつか?」
「ははは、ウケるぜ冬彦。お前魔法使えるのか?」
バスケ部員たちが一斉に嘲り笑う。
立ち上がった冬彦は唇を噛みしめ四人を見やった。
「てめえ! なんだその顔は? ムカつく面しやがって! 殺すぞ!」
「――ぐはあっ」
バスケ部員が放つ鋭いボディブローが冬彦の腹を襲った。
その衝撃に耐えられず、冬彦は身体をくの字に曲げ膝から崩れ落ちる。
大きく開いた口からは、胃液と唾液が一緒になったものが、だらだら滴り落ちている。
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