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「おい、どおしたよ冬彦? 魔法が使えるんだろ? ほら、俺らに使ってみろよ。早くやり返せって……くくく、何も起こらねえぞ。この馬鹿め。魔法なんて使えるわけねえだろ。じゃあ、この本は始末しちまうからな」
苦痛に顔を歪める冬彦の前で、古びた本がビリビリと破られていく。
「……あ、ああ……ふ、古本屋をまわって……やっと……見つけたのに」
床に散らばる本の残骸を、冬彦がかき集める。
「ちっ、くだらねえ本なんか買う金があんなら俺らによこせ! おらっ!」
「――がはっ」
バスケ部員たちの蹴りを身体中に食らい冬彦がのた打ち回る。
「いいか? テストが終わるまでに金を用意しとけよ。できなかった時は、こんなもんじゃすまねえからなあ。あと、このゴミ屑を綺麗に掃除しておけ」
高笑いを響かせバスケ部員たちは部室を出ていった。
遠ざかる足音を聞きながら、冬彦は目に涙を溜め、痛みに耐えていた。
「ぐ、ぐぎぎっ……殺してやる……殺してやる……殺してやる」
誰もいなくなった部室棟の廊下に、漏れ聞こえる冬彦の呻き声は、まるで呪文を唱えているかのようであった。
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